2008年05月15日
俺はタンクマン8 『ライダー編』

夫が亡くなりました。
14歳と10歳の兄妹を残して。
棺にのりの利いたシーツが敷かれています。
温かみのない清潔だけが取り柄の箱の中に夫は眠っています。
主人の顔は安らかでした。
その『やすらぎ』がつくられたものだと知ったのは、半年経ってからでした。
日々の生活に悲しみが誤摩化されていると気づきはじめた頃。
彼らからのコンタクトは驚くほど簡単な一本の電話でした。
ダイニングの椅子に窮屈そうに大柄の男性が二人。
警備会社に勤めているはずの主人は、彼らが差し出した写真にはいません。
子供の観るようなテレビのヒーローが写っています。
でも、冷たいメタリックのヘルメットから覗く唇は私の愛した人のものでした。
「冗談と笑われても致し方ありません。」
茂木と名乗る使者は『お悔やみ』の言葉も早々に切り上げて本題を持ち出したのです。
「20数年前から我々はこの国を守ってきました。国民の想像を超えたモノたちからです。」
怪人達との死闘。謎の組織、その目的。
今をもってしても疑問は山積みだというのです。
ただ定期的に怪人は現れ、襲い、奪い去っていくとのことでした。
「ご子息のダイスケ君ですが...」
にわかには信じられませんでしたが、主人の後釜に息子が選ばれたというのです。
すでに基本的な肉体改造は済んでいると。
父親である夫の了承は残念ながらあったそうです。
未熟児で産まれたダイスケはしばらくのあいだ私とは離れた病室におりました。
私は出産の疲労の中、喜びを充分に味わうことが無いまま、ダイスケの儚い命を心配しました。
夫の行動の真意はもう分かりません。
我が子の延命の為からか、何か別の気持ちからの決断だったのか、
伺い知ることはできません。
私のこれまで共に生き、信じてきたものが崩れていきました。
信頼しきっていた二人の絆はこんなにも脆いものなのでしょうか。
死んだあの人をどんなに憎んでも、私の声は届きません。
目眩がしました。
「今日は帰ってください。」
精一杯の私の言葉でした。

学校へ行くダイスケはいつもと変わらずです。
剣道部の部長の引き継ぎがあるとかで、
起きればまるで小さな竜巻のように家を出て行きます。
普通の中学生に命を賭して闘うなんて出来ようはずがありません。
周りの14歳の子たちと同じ人生でいいのです。
クセで夕刊を夫の椅子の上に置いてしまいます。
夕食にダイスケの好物を揃えて娘のアカリと待ちます。
今夜こそ息子とこれからのことを話さねば、と思ったのです。
電話が鳴りました。茂木からです。
現状を見せたい、ダイスケくんはこちらで保護している、10分で伺います、と。
義母を連れて茂木がやって来ました。
ニコニコ笑う義母は孫のアカリと過ごせることだけを喜んでいました。
茂木のことも何も疑わず息子の同僚くらいにしか考えていないようです。
この前とは違って大きめのジープみたいな車に乗り込みます。
隣町の大きい公園へ向かいます。
噴水を挟んでベンチの近く。
小さな影が立っています。影を取り囲むように何人かの人影も見えます。

走りよる私は、にわかには信じられない光景に恐怖しました。
ダイスケの周りには怪人の肉片が散乱し、
被害に遭われただろう初老の男性が倒れています。
街灯の人工的な明かりが新しいライダーを照らしています。
メタリックのヘルメットを被った息子が声も上げられず泣いていました。
たくさんの返り血を浴びて、動くことすらできずに。
私は抱きしめると無理矢理にプロテクターを取ろうとしました。
子供を包む呪わしい存在に思えたのです。
なかなか思うように外れない装備に躍起になっていると
「...お母さん...」
と身体は大きくなった我が子から小さな声がしました。
テーマパークの清掃員のように茂木の部下たちは淡々と片付けを続けていました。
ダイスケは夫の死後1ヶ月で組織と関わりあいを持ったそうです。
携帯電話やパソコンに加えて、午後の授業を特別に休んで。
夫を失った悲しみから子供の変化を見逃してしまったのかもしれません。
努めて、いつも以上に普通に生活してくれていたのかもしれません。
父親の真似がしたかったのか、大人の口車に乗ってしまったのか?
考えつくたくさんの理由を問うよりも、
息子が傷ついた現実が大きくのしかかっていきます。

怪人とはいえ、人を殺めてしまったショックは大きく14歳の心は閉ざされてしまいました。
組織の管理下にある総合病院の一室にダイスケは運ばれました。
それからの私は、茂木の前で冷静に抗議し、時に感情的になることさえありました。
組織としては全てを忘れるという条件で『できうる最高のケア』をするそうです。
ただし改造された肉体は怪人たちの嗅覚を刺激しターゲットになってしまうのです。
私たち家族と組織、そして怪人たちとの繋がりを断つことはできないことを知りました。
ツクリモノの指を外しながら茂木は言いました。
「こういうことは個人的なことなので避けてきましたが、
私も家族と身体を失いました。そして戦友を失ったのです。
御主人と私はパートナーでした。
もしもの時は『自分のかわりに御家族を守る』と互いに約束をしていました。
...申し訳ありません。」
「あの、主人は何故、こんなことをしていたんでしょう?」
「違います。私どもは志願してこの場にはおりません。
ある日、突然にです。半ば、強引に連れて来られるケースも珍しくない。
拒絶はできません。
それは死を意味するからです。
不公平な人生を呪いつつ闘っています。闘うしかない。
でも、できるならこんな毎日は早く終らせたい。普通に生きたい。」
「ある時、彼が言ったのです。」
『正直、誰か代わって欲しいさ。でも何かを守ることは誰でもしてることだろ?
ましてや俺は父親だしな。』
「彼は大きなものを守ろうとしていました。」
白いベッドに幾分穏やかになってきた寝顔を見せ、ダイスケがいます。
もしかしたら明日、このとなりの病室に『二人目のダイスケ』が収容されるかもしれません。
私はこの子を救いたい。家族を守って生きたい。
数日後、私はライダーになる決意をしました。
いいえ。ライダーになりたくなったのではありません。
夫の歩んできた道のりを実際に追ってみたかったのです。
茂木は反対しましたが、組織は仲間にしておくことを望みました。
いろいろな意味でその方が都合がいいとも言えますから。

それまで無機質に見えていた組織も交流ができると変わるものでした。
顔の無いように思えた人たちも、名前で呼ぶようになると違います。
白衣の名札にマスコットが揺れていたり、机に恋人の写真を飾っていたり。
笑い声さえ聞こえてきます。一般のオフィスと変わりません。闘うこと以外は。

ライダーにはクラスがあって勤務体制も違います。
私は拘束時間の一番少ない『サードライダー』を目指しました。
肉体的な手術はなく科学的な武装に頼り、支援を軸としたポジションです。

これまでテニスとジョギングは続けてきた私ですが、訓練は厳しいものでした。
ただ不思議とそこに生きている実感のようなものを得たのも確かです。
アカリのお弁当を包みながら、講義の内容を頭で反芻する。
スーパーの特売日だとふと思い出し、あわてて弾丸の装填に集中する。
桜が散った頃、テストに仮合格しました。
息子も通院だけでよい程に回復しました。
『御主人の装備です。作りなおしてあります。男性用なのでサイズは大きめですが..』
着替え終わった私は、もう少し可愛らしい色のコスチュームは無いのかと尋ねました。
研究員たちが失笑しています。
仕方がないので持ってきていたエプロンをして帽子も被りました。
あの人が好きだった長い髪も見えるようにしました。
冷たい感じのライダーには私はなりたくありませんでした。
人間を捨てるようなことはしてはダメだと感じたのです。
『ライダーママ』
近い将来、私はそう呼ばれるようになります。
傷つき、恐怖におびえ、自分の拳を血に染める日もあります。
でも花壇の手入れをしたり、子供たちと旅行を楽しむ日だってあるのです。






ひとつ私には言えることがあります。
選ばれてここにはいません。
自分で選んでここにいます。
私の人生。
何も変わりません。何も変えたくないのです。
朝焼けに照らされた町は昨日と何も変わらない様子です。
明日もこの朝焼けを見る為にバイクに乗ります。
誰かの悲鳴を聞いたら私は駆けつけます。
ライダーですから。



すぺさるさんくす
Dai Matova
KaZu Watanabe
RYO Forder
miki Morigi
この物語は彼らなくして生まれませんでした。
創作意欲の湧くコスチュームに数々のヒロイックポーズ、魅力的な撮影場所。
どうもありがとう!
Dai Matova
KaZu Watanabe
RYO Forder
miki Morigi
この物語は彼らなくして生まれませんでした。
創作意欲の湧くコスチュームに数々のヒロイックポーズ、魅力的な撮影場所。
どうもありがとう!
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この記事へのコメント
えと。長いことかかって書いてみました。
まだ書いたのあるけどねぇ〜。
できれば画面デカクしてみて下さい。
そーすっと連続写真わかっかも。
読んでくれた人、ありがとう!
まだ書いたのあるけどねぇ〜。
できれば画面デカクしてみて下さい。
そーすっと連続写真わかっかも。
読んでくれた人、ありがとう!
Posted by タンク
at 2008年05月15日 16:51
at 2008年05月15日 16:51So great!!
I have never read such a fantastic story based on SL world!
だよ、たんくちゃん!
I have never read such a fantastic story based on SL world!
だよ、たんくちゃん!
Posted by いくら at 2008年05月15日 17:07
す。す。すごい!!!
すごいストーリーですねぇ。
思わず全部読んじゃいました!!!
すごいストーリーですねぇ。
思わず全部読んじゃいました!!!
Posted by NEO
at 2008年05月15日 17:26
at 2008年05月15日 17:26ライダーママに乾杯!
Posted by おっきな男 Rons Hirons at 2008年05月15日 18:11
凄い!!
想像以上でしたw
今時のイケメンライダーなんかより、ずっと深くて泣けます><。。
グっときました!!
想像以上でしたw
今時のイケメンライダーなんかより、ずっと深くて泣けます><。。
グっときました!!
Posted by KaZu at 2008年05月15日 20:44
首をながくして待っていました。
悲しいけど、薄明るかったです。
どんどんupしてほしいです。
悲しいけど、薄明るかったです。
どんどんupしてほしいです。
Posted by caca at 2008年05月16日 01:18
いくらちゃん
うほ。英語じゃん。また書くから読んでね。
あ。エプロンが『おばあちゃん』だから『ライダーバァバ』っての内緒よー!ちょと面白いけど〜。うひひ。
NEOさん
はじめましてー!コメントありがとござーます♪
甘い部分多いですけど、これからもどぞよろちくです〜ペッコシ。
Ronさん
えへへ〜乾杯〜♪(何故か照れてしまったょ)
KaZuさん!
今回もお世話になりまして〜あじがとござますう。
あたしもKaZuさんのポーズにグッときましたよぉ。
あ。近頃のライダーに『細川茂樹』がぁ!?
子供と観てました。
cacaさん
ぬは。まじですか。うれしいなぁ〜。
いっぱいあるんだすよ。UPしてない『俺タンシリーズ』
まだ甘い。SSない。勇気がないでお蔵入り。
cacaさんの絵からもストーリーがどばどば放出されてますよー!
迦陵頻伽が出てくるような物語も書きたいな〜。
cacaさんの絵好き、見に行こう。
うほ。英語じゃん。また書くから読んでね。
あ。エプロンが『おばあちゃん』だから『ライダーバァバ』っての内緒よー!ちょと面白いけど〜。うひひ。
NEOさん
はじめましてー!コメントありがとござーます♪
甘い部分多いですけど、これからもどぞよろちくです〜ペッコシ。
Ronさん
えへへ〜乾杯〜♪(何故か照れてしまったょ)
KaZuさん!
今回もお世話になりまして〜あじがとござますう。
あたしもKaZuさんのポーズにグッときましたよぉ。
あ。近頃のライダーに『細川茂樹』がぁ!?
子供と観てました。
cacaさん
ぬは。まじですか。うれしいなぁ〜。
いっぱいあるんだすよ。UPしてない『俺タンシリーズ』
まだ甘い。SSない。勇気がないでお蔵入り。
cacaさんの絵からもストーリーがどばどば放出されてますよー!
迦陵頻伽が出てくるような物語も書きたいな〜。
cacaさんの絵好き、見に行こう。
Posted by タンク at 2008年05月16日 08:56
久しぶりに良い物見せていただきました。ありがとう。
Posted by RYUJI at 2008年05月17日 01:58
RYUJIさん
こちらこそ、読んで頂きまして大変嬉しゅうございます〜♪
ペッコリ。
こちらこそ、読んで頂きまして大変嬉しゅうございます〜♪
ペッコリ。
Posted by タンク at 2008年05月18日 08:38
面白い! すごい!
感想おそくてごめんなさい!
感想おそくてごめんなさい!
Posted by さざん
at 2008年05月20日 16:12
at 2008年05月20日 16:12さざん♪
ほんとか!よかった!
また書く気持ちになった。ありがと!
ほんとか!よかった!
また書く気持ちになった。ありがと!
Posted by タンク at 2008年05月21日 12:24
す、すご、、。
切り口、語り口、、素晴らしいです♪
切り口、語り口、、素晴らしいです♪
Posted by とおりかかり at 2008年05月26日 22:16
とおりかかりさん
いらっしゃりませ〜。
通りかかりにお読み頂いたのですね。
わざわざのコメントうれしゅうございます♪
いらっしゃりませ〜。
通りかかりにお読み頂いたのですね。
わざわざのコメントうれしゅうございます♪
Posted by タンク
at 2008年05月27日 14:55
at 2008年05月27日 14:55ぬわ〜!!! 予想以上の内容でおったまげました!!1
レディース用途は無視して作ったんですが、
意外と様になるもんですなw。
てか、俺もストーリー物を作ろうと思ってた所なんで
刺激とインスピレーションを貰いつつ、
先を越された悔しさで複雑な気持ちですw。
レディース用途は無視して作ったんですが、
意外と様になるもんですなw。
てか、俺もストーリー物を作ろうと思ってた所なんで
刺激とインスピレーションを貰いつつ、
先を越された悔しさで複雑な気持ちですw。
Posted by DIE at 2008年06月04日 11:04
DIEさん
先とか後とかはポィポィ。
DIEさんにしかDIEさんの物語はつくれないもの♪
是非、ストーリーお聞かせ下さいまし(^^)
先とか後とかはポィポィ。
DIEさんにしかDIEさんの物語はつくれないもの♪
是非、ストーリーお聞かせ下さいまし(^^)
Posted by タンク at 2008年06月05日 01:00



